38話 HP、やっぱりヤラセ記事か?

少し興味深いブログ記事があると情報が入ったので読んでみた。「ある編集者の気になるノート」というブログの記事(07年1月14日)で、とりあえず、紹介したい。


「週刊東洋経済HPで自社への不満をぶちまけてるのは、他ならぬ東洋経済の編集者じゃないか?」


こんなタイトルで、管理人の「ある編集者」さんは、記事でリンクしてある東洋経済新報社代表取締役・柴生田晴四・注*)のホームに掲載された悩み相談について大胆な推理を展開している。この相談者は東洋経済新報社の社員ではないか、というのだ。平たく言えば「ヤラセ」だと推理している。まず「相談者」の悩みを読んでほしい。

 『あまりに古い社風に不満です』(27歳男性)
<相談者の悩み>
 こんにちは。某大手出版社勤務の20代書籍編集者です。
 一応、業界では大手の部類に入る会社ではありますが、社風はありえないくらいの古さです。賃金体系は完全年功序列、ある段階から管理職になるというキャリアパスしかありません。20代は忙しい割に給料が安く、50代以上はほとんど仕事らしい仕事はせずに、健康のために毎朝会社に来ているような人でも倍の給料をもらっています。
 と、まあここまでならよくありがちな話かもしれませんが、わが社の場合、なにより驚いたのは「成果がまったく報酬に反映されない」という点です。実は今年、当社としては珍しいベストセラーを担当しまして、会社の売上げに何億円と貢献いたしました。
 が、その報奨は、金一封の数万円だけ。月々の給料は、年齢給が大半を占めるため、最高の評価を得ても、数千円しか変わらない。ボーナスにいたっては組合員全員が同じ掛け率で査定自体が存在しないため、成果を上げても上げなくてもまったくと言っていいほど給付額は変わりません。他の企業に勤める知人の間でも、ここまで極端なケースはちょっと聞いたことがありません。(以下割愛)


まず上記引用文のパラグラフ2あたりで「あれ〜? この話は・・・」と、あの日のことを思い出した。06年に私は東洋経済新報社から「株価チャート練習帳」を出版したけれど、しばらくして、あるカフェで私が同社の社員黒坂浩一氏(第6話参照)と話している時、彼が同社の賃金体系について自ら上記とほぼ同じ内容を語っていたのだ。彼は「社内の「働かないやつ」と賃金差はわずか500円しか違わなくって、やってられませんよー。そう思いません?」と、なぜかその日の黒坂氏はいきなり会社の賃金のことを持ち出し、相当不満をもっている様子で、何の関係もない私に振ってきた。


「うん? これって・・・もしかすると、何かボクに要求しているのか?」


と内心不可解に思い、とりあえず彼に、「どうしてそんなことをボクに話すの?」と尋ねてみると、「いや、まぁ、いいんですけどね、別に」と、黒坂氏は話をそらすのに必死だった。そりゃそうだ、自社の賃金体系の不満を外部の筆者にぶつけてどうなるのよ。


さらにこんなこともあった。私が「練習帳」の出張校正が長引いた夜、帰り際、黒坂氏がタクシーのチケットを差し出し「これで帰って下さい」と言った。私は「いやー、必要ないよ。まだ宵の口で電車が動いているじゃないか」と断った。あのチケット、経理へ返しておいてくれたのか?と、今思い返している。だって、あの頃の黒坂氏は何かというとお金の話をしたからだ。経理さん、ボク、あの日のチケットを受け取っていませんから、間違いがないかどうか、チェックしておいてね!


「最近は忙しくて、ボク社内でタクシー代一番使っているって、ちょっと経理から怒られちゃって・・・」と黒坂氏が言うから、「いくらぐらい使っているの?」と聞いてみたら、彼の答えは:


   「それでも20万ぐらいですけど」


と答えた。経理が怒るのも当たり前だ。一介の編集者のタクシー代が月20万円。この20万円は、黒坂氏のホラか見栄か、それとも20万円ぐらいタクシー代を使ってみたい願望話か。ホンネを言えば、筆者の二次使用料を支払わない、自社の弁護士が「ケチだ」と言っている会社が、中途入社の平の編集者に20万円を使わせるのか。


「ある編集者」さんの推理にひとつ情報を加えるとすれば、相談記事を書かれていた2006年という年は、黒坂氏が担当した私の「株価チャート練習帳」がビジネスのベストセラーに上がっていた時期でもあったから、さらに話は符号するし、推理に説得力が生まれるのだ。


ところで相談者は「わが社の場合、なにより驚いたのは「成果がまったく報酬に反映されない」という点です」と書いているが、実は、相談者がもっと驚くことがあることを教えよう。東洋経済新報社の河野修部長(第9話参照)が部下のことを社外の私に「実は・・・」と平気で吹聴した。ここで具体的内容については書かないし・書けないが、あえて言う必要のない問題を持ち出す上司がいるという現実――。これを面前で聞かされた時は、心の通わないまったく嫌な空気の漂う会社だなと思ったものだ。


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